2026/09/06
【D活サポーターに聞く】小児科医 時田章史さん Part2●診察室で見えてきた、子どもたちのビタミンD不足
乳児健診や日々の診療を通して、子どもたちのビタミンD不足を実感している、クリニックばんびぃに院長・小児科医の時田章史さん。母乳栄養や外遊びの減少、徹底した紫外線対策など、今の子どもたちがビタミンD不足になりやすい背景と、診療現場で見えている実態をお聞きします。

乳児健診では、母乳栄養なら必ずビタミンDの話
──クリニックでは、ビタミンDについてどのような取り組みをしていますか?
まず、乳児健診に来た赤ちゃんが母乳栄養だったら、必ずビタミンDのお話をしますね。
母乳にはビタミンDが非常に少ないので、乳幼児用のビタミンDサプリメント「BabyD」をおすすめしています。
クリニックでも販売していますし、近隣の薬局にも置いてもらって、必要な方が手に入れやすいようにしているんです。
2人目、3人目のお子さんになると、以前にも僕から話を聞いていて「先生、もう飲んでます」と言うお母さんもいますよ。
──母乳栄養児以外にも、ビタミンDのお話をすることはありますか?
もちろんです。例えば、かなり色白でいかにも紫外線対策をしっかりしていそうなお母さん(笑)。
聞いてみると、やっぱり「UVカットしています」ということが多いんです。
お母さんが紫外線を避けているということは、赤ちゃんにも同じように対策をしていることが多い。
今はベビーカーにもUVカットのシートをかけていますからね。
そういう日常の様子も見ながら、ビタミンDのお話をするようにしています。
「念のため測ってみよう」で、ひと桁の子どもも!
──血液検査で、子どものビタミンD濃度を調べることもありますか?
ありますよ。
例えば、華奢で顔色があまりよくない、外でスポーツをするタイプではなさそう、朝なかなか起きられないなど、いろいろな訴えがあるお子さんの場合。
貧血や起立性調節障害なども考えながら、「一通り血液検査をしておきましょう。ビタミンDも測ってみようね」と調べることがあります。
そうすると、ビタミンDの血中濃度25(OH)Dが20ng/mLを超えている子はほとんどいなくて、ほぼ「欠乏」レベル。
15ng/mLくらいだったり、中にはひと桁だったり。そういう子が出てくるんです。
それをきっかけに、日光に当たることや、必要に応じてサプリメントで補うことをお話しします。
*注)血中ビタミンD濃度25(OH)Dの判定基準は…
【20ng/mL未満:欠乏 20~29ng/mL:不足 30ng/mL以上:充足】
詳しくはこの記事で。
▶どうして25? OHって何? ビタミンDの数値「25(OH)D」のナゾに迫る!
──子どものビタミンDの基準は、大人とは違うのでしょうか?
基本的には大きく変わりません。
25(OH)Dの血中濃度は、できれば30ng/mL以上を目指したいところです。
子どもでは少し幅を持って考えることもありますが、少なくとも20ng/mLは切らないようにしたいですね。
くる病だけじゃない。ビタミンD不足の子どもたち
──小児科の現場で、ビタミンD不足は増えていると感じますか?
増えているというより、子どもたちが外で遊ぶ機会が減ったことで、日照不足の子は増えていると思います。
実際、くる病(ビタミンDが足りないことにより、カルシウムやリンが不足して骨がもろくなる病気)も増えているんですよ。
今は昔ほど外遊びをしませんし、マンションで窓にはUVカットガラス、外に出ても紫外線対策をしますから。

──くる病になるほどの欠乏でなくても、ビタミンD不足の子どもは多いのでしょうか?
多いですね。
表面には見えていなくても、ビタミンD不足の子どもはかなりいると思います。
O脚は、ビタミンD不足に気づくサインになることも
──ビタミンD不足というと、まず骨を思い浮かべる人が多いですが、それ以外にどんな影響が気になりますか?
ビタミンDは骨だけではありません。
全身の細胞にビタミンDの受容体がありますから、免疫系をはじめ、いろいろなところに関わっています。
最近は、アレルギー疾患や精神・神経系の疾患などとビタミンDとの関連についても、さまざまな研究がされています。
特に母乳栄養児は食物アレルギーが発生しやすく、ビタミンDを補充することで食物アレルギーが減ることがわかってきました。
だから、「骨が丈夫ならビタミンDは足りている」という話ではないんです。
──先生は子どものO脚についても研究されていますが、保護者が気づけるサインはありますか?
赤ちゃんは、もともと少しO脚なんです。
そこからつかまり立ちをして歩くようになると、体重が膝にかかるようになります。
その時期にビタミンDが不足していると、O脚が強くなっていくことがあります。
ですから、まずはお子さんの立ち姿を見てあげることですね。
「うちの子、ちょっとO脚が強いかな?」と感じたら、ビタミンD不足も原因のひとつとして考えることができます。
もちろんO脚には成長に伴う生理的なものもありますから、O脚=ビタミンD不足ではありません。気になる場合は、小児科や整形外科などで相談してほしいですね。

子どもの外遊びが減った結果、ビタミンD不足に
──「ビタミンDが不足しているかもしれません」と伝えると、保護者はどんな反応をしますか?
「そういえば…」と気づかれる方が多いですね。
もちろん日に当たる機会も少ないですが、食べ物もです。
ビタミンDが多い食品といえば鮭や青魚、きのこ類ですが、子どもがそれらを好んでたくさん食べるかというと、なかなか難しいでしょう?
食事や普段の生活を一緒に振り返ってみて、「うちの子も少ないかもしれない」と思われるようです。
──ビタミンDで、誤解されていることはありますか?
「日焼けはすべて悪いもの」というイメージは強いですね。
もちろん、紫外線を浴びすぎる必要はありません。
でも、人間はもともと日光を浴びることでビタミンDをつくってきました。
紫外線を徹底的に避け、その代わりに食事から十分なビタミンDを摂るというのは簡単ではありません。
食事だけを考えるのではなく、「日光にどのくらい当たっているかな?」ということも、生活の中で少し意識してほしいですね。
次回は…
母乳にはなぜビタミンDが少ない? 赤ちゃんはいつからビタミンDを意識すればいい? 日焼け止めを使いながらビタミンDもつくるには? 赤ちゃんから大人まで、家庭でできるビタミンD対策についてです。
▶Part3●赤ちゃんから大人まで。家庭でできるビタミンD対策
■ PROFILE ■
時田 章史(ときた あきふみ)
小児科医/医学博士/医療法人Bambini理事長/クリニックばんびぃに院長。静岡県富士宮市生まれ。順天堂大学大学院医学研究科修了。
1991~1993年、オーストラリアGarvan医学研究所に留学し、ビタミンD受容体遺伝子と骨代謝について研究。帰国後は順天堂大学での勤務を経て、故郷・富士宮市で父とともに診療にあたり、地域医療に従事。
2015年、57歳で東京・白金台にクリニックばんびぃにを開院。現在は産後ケアルームや病児保育室も運営し、子どもと家族を切れ目なく支える医療・子育て支援を実践。日本感染症予報協会理事長、NPO法人「VPDを知って、こどもを守ろうの会」理事などを務め、感染症対策や予防接種の啓発にも尽力。
▶クリニックばんびぃに 公式サイト
取材・文・人物撮影/蓮見 則子


