2025/03/21
ビタミンDと乳がん
ここでは、血中ビタミンD濃度が高い女性は乳がんのリスクが大幅に低いことが明らかになりました。特に60 ng/ml以上の濃度では、20 ng/ml未満の女性に比べてリスクが80%低下することが示されています。

ビタミンD状態を示す生理学的指標である血清25-ヒドロキシビタミンD [25(OH)D] 濃度が高いことと、乳がんリスクが低いこととの間の関連性は、数多くの疫学研究によって明らかにされていますが、40 ng/mlを超える濃度で評価を行った研究はほとんどありません。
そこで、55歳以上の女性における25(OH)D濃度と乳がんリスクとの関係を25(OH)D濃度の広い範囲にわたって調査することを目的とする研究が行われました。
【試験の方法】
2つのランダム化臨床試験(n=1129, n=2196)および前向きコホート(n=1713)のプールデータを用いて、25(OH)D濃度を幅広く検討した(プール解析)。アウトカムは、観察期間中の乳がんの診断とした。
1)20 ng/ml未満から60 ng/ml以上の25(OH)D濃度別に罹患率を比較し、2)Kaplan-Meierプロットを作成し、3)多変量Cox回帰を用いて、複数の25(OH)D測定値を用いて25(OH)Dと乳がんリスクとの関連を検討した。
【結果】
プールされたコホート(n=5038)において、77人の女性が乳がんと診断された(年齢調整罹患率 512例/10万人年)。結果は3つの解析で同様であった。
第一に、罹患率を比較すると、25(OH)D濃度が60 ng/ml以上の女性では、20 ng/ml未満の女性と比較して乳がんの罹患率が82%低かった(罹患率比 0.18, p=0.006)。
次に、20 ng/ml未満、20~39 ng/ml、40~59 ng/ml、60 ng/ml以上の濃度に対するKaplan-Meier曲線は有意に異なっており(p=0.02)、60 ng/ml以上の群で乳がんのない割合が最も高く(99.3%)、20 ng/ml未満の群で乳がんのない割合が最も低かった(96.8%)。乳がんに罹患した割合は、60 ng/ml以上の女性では、20 ng/ml未満の女性と比較して78%低かった(p=0.02)。
第三に、多変量Cox回帰では、25(OH)D濃度が60 ng/ml以上の女性は、20 ng/ml未満の女性よりも乳がんのリスクが80%低いことが明らかになった(HR 0.20, p=0.03)。25(OH)D濃度が高いほど、乳がんリスクは用量反応的に減少し、60 ng/ml以上の濃度が最も予防的であった。
研究者たちによると、ビタミンDは乳がんの発生と進行の予防に多くの役割を果たす可能性があり、細胞周期の制御や分化の促進、細胞間接着の増加、DNA損傷からの保護、サイトカインの制御、免疫細胞の活性化、炎症の抑制などによって悪性転化を抑制する作用があると考えられています。
■論文情報
Breast cancer risk markedly lower_with_serum 25-hydroxyvitamin D concentrations ≥60 vs <20 ng/ml (150 vs 50 nmol/L): Pooled analysis of two randomized trials_and_a prospective cohort
■掲載誌:PLoS One. 2018 Jun 15;13(6):e0199265.
■掲載日:2018年6月15日
DOI:10.1371/journal.pone.0199265